2024年7月の胃カメラ/大腸内視鏡の実績~ヘリコバクターピロリ未感染胃癌
7月の消化器内視鏡実績
7月のほんじょう内科の内視鏡実績は、胃カメラが118件、大腸カメラが70件でした。
ピロリ菌の感染は胃癌の最大の危険因子です。しかし、ピロリ菌の感染がない方にも胃癌ができることがあり、当院でもピロリ未感染胃癌が診断されることが増えてきました。
ピロリ未感染胃癌(H.pylori未感染胃癌)
ピロリ未感染胃癌とは
ピロリ菌の持続感染は胃癌の最大の危険因子です。本邦で診断される胃癌の多くがピロリ菌が感染している胃まはた、ピロリ菌が以前感染していた胃から発症しています。
しかし、ピロリ菌の感染がない方にも胃癌ができることがあるため油断はできません。
当院でもピロリ菌の感染歴がない方の胃癌が診断されることが増えてきた印象です。
ピロリ未感染胃癌の種類
ピロリ未感染胃癌には6つのタイプがあります。
① 胃底腺型胃癌
② ラズベリー型胃腫瘍
③ 白色扁平隆起型の低異型度高分化型腺癌
④ 幽門腺領域に発生する腸型・胃腸混合型形質の低異型度高分化型腺癌
⑤ その他の胃型腺癌
⑥ 未分化型腺癌(印環細胞癌)
これらのピロリ未感染胃癌のうち、最も頻度の多いのは印環細胞癌です。
H.pylori陰性印環細胞癌
H.pylori陰性印環細胞癌の胃カメラ所見
H.pylori陰性印環細胞癌は小さく発見されることが多く、診断時の腫瘍径は6~10mm程度のことが多いです。
また、粘膜内にとどまる粘膜内癌が多いです。
M/L領域(胃の中央部から十二指腸に近い側)に多く、白っぽい平らな病変(褪色調の平坦病変)が特徴です。
粘膜内癌のうちは粘膜表層に正常な組織が残っているため、はっきりした凹凸はありません。
このため、いつもは癌の範囲をはっきりさせてくれるインジゴカルミンを散布するとかえって病変の範囲がわかりにくくなります。
拡大内視鏡では窩間部の開大を確認できることがあります。
H.pylori陰性印環細胞癌の鑑別診断
胃カメラの所見だけで見分けがつかない病変にMALTリンパ腫(mucosa associated lymphoid tissu lymphoma)があります。
粘膜内に留まる胃印環細胞癌の診断には生検・病理診断が必要です。
H.pylori陰性印環細胞癌の病理所見
粘膜内に留まる印環細胞癌では、粘膜の表層は非腫瘍性の組織です。
腺窩と胃底腺の境界部にMUC5陽性の印環細胞癌が認められます。
H.pylori陰性印環細胞癌の病理所見
「胃癌に対するEMR/ESDガイドラン」によると、20mm以下のUL(-)、cT1a未分化型癌はESDの絶対適応です。
つまり、悪性度が高いとされている印環細胞癌だったとしても早期に診断できると胃カメラを使った内視鏡治療で根治が期待できるということです。
まとめ
ピロリ未感染胃癌のうち、最も多く見つかるピロリ未感染印環細胞癌について解説しました。
胃癌はピロリ菌の感染歴がある方に発症することが多いです。しかし、ピロリ菌感染がない方にも胃癌が発症することがあります。
「ピロリ菌感染なし」と診断された方も、50歳以上では2年に1回程度の胃カメラ検査を受けましょう。