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胃がんと家系!胃がんは遺伝する?

[2024.09.05]

胃がんと家系!胃がんは遺伝する?

 

どんな人が胃がんに罹りやすい?

日本人の2人に1人は一生の内に一回は「がん」と診断されます。そして、日本人が罹る癌のなかで胃がんは3番目に多い癌です。

では、胃がんに罹りやすい方にはどんな特徴があるのでしょうか?

ピロリ菌感染が胃がんの最も重要な原因であることは疑う余地がありません。日本人の胃がんの9割以上にピロリ菌が関与していると言われています。

では、家系は胃がんの罹りやすさと関係ないのでしょうか?

しばしば患者さんから「うちは胃がん家系だから私も心配で」とご相談を受けることがあります。

ご親族に胃がん患者さんが多くいる方は、自分も将来の胃がんに罹る可能性が高いかどうか、とても気になるところです。

 

ピロリ菌と胃がん

ピロリ菌は胃がん全体の9割以上の発症に関与しています。

ピロリ菌感染した胃|ほんじょう内科

ピロリ菌感染は多くの場合2歳未満の免疫システムは未熟な時期に口から侵入して胃に定着します。幼少期の家庭環境や家族のピロリ菌保菌が感染に関わっており、8割ほどは母親からの感染と考えられています。

より若い時期にピロリ菌を除菌することで効率的に将来の胃がんリスクを低下させることができると考えられています。

 

ピロリ菌のお国柄

日本は世界の中でピロリ菌感染率が高く、胃がんの罹患率も高い国の一つです。

日本と同様に韓国や中国もピロリ菌感染率が高く胃癌の罹患率も多いです。

しかし、インドでは日本よりピロリ菌感染率が高いのにかかわらず胃がんの罹患率は日本の1/5以下です。

同じようにピロリ菌に感染していても胃がんの罹患率に差があるのはどうしてでしょう?

お国柄

 

東アジア型ピロリ菌と欧米型ピロリ菌

ピロリ菌は表面に注射針のような突起を胃粘膜に刺して、ピロリ菌が持っているCagA遺伝子から作られたタンパク質を注入します。CagA遺伝子からつくられたタンパク質には胃粘膜の細胞機能をかく乱して胃がん引き起こす発がん性があります。

ピロリ菌には、日本に多い東アジア型とヨーロッパやインドに多い欧米型があり、東アジア型ピロリ菌は90%以上に胃がんを引き起こすCagA遺伝子を持っています。

一方、欧米型ピロリ菌はCagA遺伝子を持つものが60~70%程度です。また、欧米型ピロリ菌はCagA遺伝子を持っていても東アジア型のCagA遺伝子とのわずかな違いから発がん性が低いです。

 

遺伝子バリアントと胃がん

いくつかの遺伝子の病的バリアントがヘリコバクターピロリ菌感染による胃がんリスクを増強させていることが2023年に理化学研究所・生命医科学研究センター・基盤技術開発研究チームの碓井喜明氏、桃沢幸秀氏、愛知県がんセンター研究所・がん予防研究分野の松尾惠太郎氏らの国際共同研究グループから発表されました。

遺伝子バリアント|ほんじょう内科

私たちの遺伝情報の本体となる物質をDNAといいます。DNAはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類の塩基と呼ばれる単位が連なってできています。ヒトの遺伝子には30億対の塩基が並んでいますが、そのうちの0.1%ほどに個人差があります。この遺伝子の個人差を「バリアント」と呼びます。バリアントは体つきや性格を特徴づけているものや、お酒や薬に対する反応を特徴づけています。

バリアントの中には、特定の病気の発症には関係するものがあり、「病的バリアント」と呼ばれています。

碓井氏らのグループは56,997人の遺伝子情報を対象に病的バリアントとピロリ菌感染が、胃がんリスク与える影響について調査しました。

その結果、ピロリ菌感染がなく病的バリアントがない方の胃がんリスクを1.00とした場合、ピロリ菌感染がなく病的バリアントを持っている方のリスクは1.68倍、ピロリ菌感染があり病的バリアントを持っていない方のリスクは5.78倍、ピロリ菌感染があり病的バリアントも持っている方のリスクは22.45倍になることが示されました。

ピロリ菌感染 病的バリアント 胃がんリスク
なし なし 1.00
なし あり 1.68
あり なし 5.78
あり あり 22.45

つまり、ピロリ菌の感染がない方では胃癌の発症に遺伝の影響は少ししかありません。しかしピロリ菌感染がある方の場合では遺伝の影響で発がん率が4倍も増加するようです。

 

家系と胃がん

家系と胃がん|ほんじょう内科

ピロリ菌感染の80%は赤ちゃんのときに母親から感染すると言われています。このため胃がんのリスクを高めるアジア型ピロリ菌の感染は家系が関与しているといっても過言ではないでしょう。

そしてピロリ菌感染がある方の中でも遺伝的な特徴によって胃がんの発症率が4倍以上違ってくるので、遺伝による影響も重要な要素であることが最近の研究で示されました。

 

まとめ

胃がんの最大のリスクはピロリ菌感染ですが、家系も胃癌の発症リスクに少なからず影響しています。

ピロリ菌感染がある方や以前ピロリ菌を除菌した方にとって、家系は胃がん発症に関連があります。

ピロリ菌を除菌した後であっても、両親や祖父母に胃がんの方がいる場合は、定期的な胃カメラ検診がとても重要です。

 

 

 消化器病専門医・消化器内視鏡専門医

 肝臓専門医・総合内科専門医 

 本城信吾 院長

 

 

 

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