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2023年11月の胃カメラ・大腸カメラ~内視鏡検査と「見落とし」

[2023.11.30]

11月の消化器内視鏡実績

11月のほんじょう内科の内視鏡実績は、胃カメラが118件、大腸カメラが56件でした。

今月は胃アニサキス症が多く5例ありました。これから年末年始にかけてお寿司やお刺身を食べる機会が増えてくるかと思います。くれぐれもご用心ください。

 

内視鏡検査と「見落とし」

見落としってあるの?

1回の大腸内視鏡検査では6㎜以下のポリープのおよそ20%が見落とされているという報告があります。

 

「えーっ、辛い思いして受けた大腸カメラでポリープを見落とされることがあるの?!」という皆さんの声が聞こえてきそうです。

 

初回の大腸カメラ検査を受けてから3~4年以内に発見される大腸癌をPCCRC(Post-colonoscopy colorectal cancer)と言います。2007年から2011年にかけてPCCRCの報告が海外から相次いでなされました。その中では大腸カメラを受けた方がその後3年以内に大腸癌を発見される割合は3.4~9.0%にも及ぶとのことでした。

PCCRCの中には、1~2年前にはなかったものが急速に大きくなった癌も含まれてはいます。しかし一方で、大腸がんの60~70%は大腸ポリープから発生しているため、PCCRCの主な原因は大腸ポリープの見落としだと考えられています。

 

なぜ大腸ポリープは見落とされる?

どうして大腸カメラで病変が見落とされてしまうのでしょう?

大腸ポリープが見落とされる理由には以下のものがあります。

 

前処置不良

大腸の中に便が残っていると精密な内視鏡検査が行えません。このため検査の前日には便に固形のカスが残りにくい検査食を召し上がっていただきます。そして緩下剤や腸管洗浄剤で便をすっかり洗い流してから検査に望んでいただいています。液体や細かいカスは内視鏡の先端から吸い取ることができますが、大きなカスは大腸粘膜を覆ってしまい観察を妨げます。

 

大腸のヒダ、曲がり

大腸はまっすぐのびるトンネルではなくヒダや曲がりがあります。ヒダや曲がりは死角をつくるため小さいポリープを見逃す原因となります。

 

平坦病変

大腸ポリープの多くは大腸の壁からはっきりと盛り上がっていますが、平坦病変といわれるほとんど盛り上がりのないポリープがあります。周りの粘膜と平坦病変の色が似通っている場合は、一見するとポリープが存在しないように見えてしまうことがあります。

 

見落としを防ぐために

大腸カメラ検査は、

①スコープ先端を盲腸まで進める「挿入」

②病変を検出する「観察」

③見つけた病変の質を判断する「診断」

④ポリープを切除する「治療」

の4つのステップがあります。見落としに関係するのは②「観察」と③「診断」です。

 

観察時間

いつもは車で通る道を歩いて通ったときに「こんな建物があったんだ」という発見をした経験はありませんか?大腸全体をどのくらいの時間をかけて観察するかは見落としを減らすためにとても重要です。以前から観察にかける時間6分以下だと病変の発見率が劣るとされていました。最近では6分より9分以上の観察でより多くのポリープが発見されると中国のグループから報告がありました。

 

画像強調内視鏡技術(IEE)

普通の白い光で観察していると見つけにくいポリープを見つけやすくする技術です。特殊な波長の光を当てて観察したり、色のコントラストやわずかな凹凸を強調して表現することで、内視鏡医が病変を認識しやすくします。当院でもBLIとLCIという2種類のIEEを使った観察を行うことができます。

 

先端アタッチメント

大腸のヒダや曲がりによってできる死角を減らすためスコープ先端に装着するアタッチメントが工夫されています。最近登場した、ENDOCUFFやEndo-Wingはスコープの先端近くに6本から8本の細長い花びらのような羽根です。羽根がヒダや曲がりを引っ掛けて死角を減らす手助けをします。

 

内視鏡AI

内視鏡AIは世界の内視鏡医が注目している技術革新の一つです。内視鏡AIは病変を発見し内視鏡医に音と画面の表示で知らせてくれます。また、切除すべきポリープと切除が必要でない病変の区別をしてくれます。自動車で例えるなら内視鏡医は運転手のように操作しながら観察していますが、内視鏡AIはあたかも信頼できるパートナーが助手席に座ってくれているようです。

 

検査間隔

日々私たち消化器内視鏡医は見落としを少なくする努力をしてますが、見落とされる大腸ポリープが少なからずあることは事実です。このため定期的に内視鏡検査を受けることが大切なポイントとなります。検査間隔については、内視鏡医の立場やお国柄によっても意見が異なります。個人的な意見ではポリープ切除をした場合は1年後、治療対象となる病変が一つも見つからなかった方は3年後の検査をおすすめしています。日本消化器内視鏡学会のガイドラインによると切除したポリープが良性だった場合は3~5年後の再検査が推奨されています。

 

ADR~検査精度の指標

ADR(adenoma detection rate)とは、大腸カメラ検査で腺腫性ポリープ(adenoma)を発見する確率のことです。大腸がんの6~7割は腺腫性ポリープから発生します。腺腫性ポリープを発見し切除することで将来の大腸がんリスクを50%以上低下させられるため、ADRは大腸カメラ検査の精度を表す重要な指標と考えられています。ただし検査の対象となる患者さんの背景によってもADRは異なります。高齢の検査が多いとADRは高く、若い方の検査が多いとADRは低くなる傾向があります。一般には便潜血陽性の方ではADR50%程度が目安とされています。

 

南平岸の消化器内科・胃カメラ・大腸内視鏡

ほんじょう内科

院長 本城信吾

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