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便秘

便秘とは排便の回数や量が減って、お腹が痛くなったり、排便するのに時間がかかったり、強くいきまないと便が出なくなったりした状態です。毎日排便があっても、コロコロ便が少しずつしか出ない場合は「便秘」と判断します。便秘は中年までは女性に多く、高齢者では男女ともに多くなります。

便秘の種類と原因

弛緩性便秘

胃腸は内容物を先に送り出すために収縮・弛緩の動きをリズム良く繰り返しています。これを蠕動運動といいます。弛緩性便秘は蠕動運動が弱く便を先に進められないために起こる便秘です。加齢や生活習慣の乱れがこのタイプの便秘を引き起こします。

痙攣性便秘

大腸の蠕動のリズムに変調をきたし、収縮がゆるみにくくなるために起こる便秘です。精神的なストレスが原因となることが多いです。

直腸性便秘

肛門の手前、直腸まで便が運ばれてくると便意を感じます。このときにトイレへ行くと肛門が緩む反射が起こり排便できます。普段から便意を感じても排便を我慢していると直腸に便があっても便意を感じにくくなり便秘になります。排便を我慢しがちな女性に多いタイプの便秘です。温水洗浄便座の水流を強く使っている方でもこのタイプの便秘になることがあります。

器質性便秘

がんや炎症によって大腸の一部が狭くなることによっておこる便秘です。便秘薬を服用するとかえって症状を悪化させることがあります。

症候性便秘

胃腸以外の病気が原因で起こる便秘です。甲状腺機能低下症、糖尿病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、脳卒中後、脊椎の疾患が便秘の原因となります。

薬剤性便秘

胃腸以外の病気のために服用している薬が便秘を引き起こすことがあります。便秘の原因となる主な薬物は次のとおりです。

薬の種類

治療する病気

代表的な薬品名

カルシウム拮抗薬

高血圧

アダラート®

アムロジン®

カルブロック®

アテレック®

抗うつ薬

うつ病

トリプタノール®

ノリトレン®

オピオイド

がんの痛み

慢性疼痛

トラムセット配合剤®

オキシコンチン®

MSコンチン®

頻尿治療薬

過活動膀胱

ベシケア®

バップフォー®

ウリトス®

ドパミン受容体作動薬

l-ドーパ製剤

パーキンソン病

メネシット®

マドパー®

カベルゴリン®

パーロデル®

利尿薬

高血圧

慢性心不全

浮腫

フロセミド®

ナトリックス®

アルダクトン®

セララ®

吸着薬

慢性腎不全

高リン血症

高カリウム血症

レナジェル®

フォスブロック®

ケイキサレート®

カリメート®

高ヒスタミン薬

アレルギー性鼻炎

蕁麻疹

アトピー性皮膚炎

クラリチン®

アレグラ®

ザイザル®

鎮咳薬

感冒

肺炎

気管支炎

メジコン®

アストミン®

リン酸コデイン

便秘を放置するとどうなりますか?

硬い便を出すために「いきみ」を繰り返すと痔を起こします。

直腸潰瘍

硬い便が長時間直腸に留まると、直腸粘膜がダメージを受けます。

糞便塞栓

硬い便が多量に直腸に留まり大きな塊になることです。糞便塞栓になると、指などで便を掻き出さないと便が体外に出てきません。

大腸がんをうたがう危険な便秘

次のいずれか一つでも該当する便秘の場合は、大腸カメラ検査をお勧めします。

  • 便秘と下痢を繰り返す
  • 体重が減ってくる。
  • 50歳以上で始まった便秘
  • 白いゼリー状の便が混じる
  • 血便が混じる
  • 腹痛を伴う便秘

便秘の検査

特定の原因によって便秘が引き起こされていないかを調べます。

血液検査では、血糖、甲状腺ホルモン、大腸がんの腫瘍マーカーなどを調べます。

大腸がんを除外診断するために、大腸カメラ検査を行います。

大腸カメラが行えない場合は、便潜血検査を行うことがあります。

腹部レントゲンや腹部CTで、便が滞っている部位や、溜まっている便の量、器質的狭窄(がんや炎症で狭くなること)の有無を確認します。

便秘を解消する食べもの

食物繊維を多く含む食品

アボカド、こんにゃく、海藻、きのこ、豆類、ココア、オートミール、サツマイモ、ごぼう、切り干し大根、キウイ、りんご

発酵食品

ヨーグルト、ぬか漬け、納豆

水分を多く摂る

水分摂取が少ないと便秘になりやすいです。

朝起きたときに、コップ1杯、

お風呂上りに、コップ1杯、

お水またはお茶を飲みましょう。

便秘を解消する腹式呼吸

  1. 両手をお腹の上に置きます。
  2. 置いた手が持ち上がるようにお腹を膨らませながら息を吸います。
  3. ゆっくりお腹をへこませながら息を吐きだします。
  4. 10回以上繰り返します。

便秘を解消する「の」の字マッサージ

「の」の字マッサージは自分でもできる効果的な便秘解消法です。

食事の約2時間後がマッサージのゴールデンタイムです。

  1. 仰向けになります。
  2. 手のひらでやさしくお腹全体をまるく「の」の字を書くようにさすります。
  • 力を入れすぎないでください。ちょっと弱すぎるかなと感じるくらいがちょうど良いです。
  • 1~2分程度続けるとお腹がじんわり温かく感じます。

毎日、繰り返し行うことで効果を実感できます。

便秘を解消する運動

  • ウォーキング、軽いジョギングがおすすめです。1日20分以上を目指しましょう。
  • 体幹を曲げたりひねったりする運動も、便通を改善する効果があります。
  • 誰でも知っている「ラジオ体操」は、ご自宅ですぐに始められますね。
  • 運動中にはお尻に力をいれたり、下腹部に力を入れたりしてみましょう。
  • 普段の姿勢を改善することも便秘解消には重要です。

緩下剤の種類と特徴

プルゼニド®、アローゼン®(センナ、センノシド)

プルゼニド®やアローゼン®はアントラキノン系の刺激性下剤です。

主成分は植物由来のセンノシドです。

アロエにもセンノシド類似物質が含まれています。

大腸粘膜を刺激して腸粘膜から水分と塩分の分泌を増やし、蠕動運動を強めることで排便を促進します。

作用が強いため、腹痛をきたすことがあります。

長い間繰り返し服用していると、耐性ができて薬の効果が弱まります。

食後6~10時間で効果が出現するため、寝る前に服用するのが一般的です。

お薬の影響で尿が赤くなることがありますが心配ありません。

長期連用すると大腸メラノーシスを起こします。大腸メラノーシスは大腸粘膜にメラニン色素が沈着した状態で、大腸カメラで観察すると大腸粘膜が黒ずんで見えます。腹痛などの自覚症状はありませんが大腸の機能を低下させて便秘が一層悪くなりかねません。アントラキノン系下剤の服用をやめて大腸メラノーシスが改善するのに約1年かかると言われています。

プルゼニド®やアローゼン®は短期間の使用か頓服にとどめ、長い間継続的に緩下剤が必要な場合は他の緩下剤を用いることが推奨されています。

ラキソベロン®(ピコスルファート)

ラキソベロン®はジフェニール系の刺激性下剤です。

大腸粘膜からの水分吸収を抑制し、蠕動運動を刺激することで排便を促します。

効果はアントラキノン系よりややマイルドです。

大腸メラノーシスは引き起こしませんが、長期連用で作用が弱まります。

このため、頓用(数日排便がないときにだけ服用する)での使用が推奨されています。

妊娠中、授乳中にも服用できます。

マグミット®(酸化マグネシウム)

浸透圧性下剤の一つです。消化液と混じると炭酸水素マグネシウムや炭酸マグネシウムに変わります。これらの物質腸内の浸透圧を上げる働きがあり、腸管から水分を引き寄せて便の水分を増やします。その結果、便の容積がふえ排便を促します。

直接的に蠕動運動を刺激しないため、お腹が痛くなりにくいです。

マグミット®(酸化マグネシウム)は薬代が最も安く、耐性を引き起こすことがないため長期間飲み続けるのに適した薬です。

1か月の薬剤料は3割負担の方で150~300円程度です。

薬を始めてから効果を実感するのに2~3日かかる場合があります。

胃酸を中和する作用や、尿管結石ができにくくする作用も併せ持っています。

小児にも使えます。

妊娠中、授乳中にも服用できます。

腎臓の働きが弱っている方は服用できない場合があります。

骨粗しょう症治療薬の活性型ビタミンD3製剤(アルファロール®、エディロール®など)、ビスホスホネート製剤(ボナロン®、アクトネル®など)、カルシウム製剤(アスパラCA®など)とは相互作用があるため併用は望ましくありません。

モニラックシロップ®、ラグノスゼリー®(ラクツロース)

浸透圧性下剤の一つです。

甘いシロップまたはゼリー状の薬で、小児でも飲みやすいです。

ラクツロースは便の水分を増やす浸透圧下剤です。

乳酸菌などの善玉菌を増やし、悪玉菌を減らす効果があります。

ラクツロースが善玉菌に代謝されると乳酸や酢酸が作られます。乳酸や酢酸は大腸粘膜をやさしく刺激して腸管運動を促します。

薬を始めてから効果を実感するのに2~3日かかる場合があります。

弛緩性便秘のタイプに適しています。

腎臓や肝臓の働きが弱っている方でも服用できます。

お薬の飲み合わせの心配がないため、他の薬を飲んでいる方でも安心して服用できます。

飲み続けていると、お腹の張りが現れることがあります。

モビコール®(ポリエチレングリコール)

浸透圧性下剤の一つです。

粉末を水に溶かして飲むタイプの薬です。

特有の味がするため飲みにくく感じる方がいます。

小児でも服用できます。

お薬の飲み合わせの心配がないため、他の薬を飲んでいる方でも安心して服用できます。

量の調節がしやすく、便が緩くなりすぎることが少ないです。

グーフィス®(エロビキシバット)

胆汁酸トランスポーター阻害剤というタイプの便秘薬です。

胆汁酸は肝臓で作られます。小腸では脂肪やビタミンの消化吸収を助け、大腸では便の水分を増やし蠕動を活発にする作用があります。

グーフィスは大腸に届く胆汁酸の量を増やすことで排便を促す薬です。

1日1回、食前に飲む薬で、食後に飲むと効果が弱まります。

腹痛や下痢を起こすことがあるため、用量の調節は慎重に行います。

アローゼン®やセンノシド®、漢方薬の下剤を飲んでいてもスッキリしない方の代替薬に適しています。

肝疾患治療薬のウルソ®(ウルソデオキシコール酸)、高コレステロール血症治療薬のコレバイン®(コレスチミド)、心疾患治療薬のジゴシン®(ジゴキシン)との併用は注意が必要です。

リンゼス®(リナクロチド)

上皮機能変容薬というグループの薬です。

腸管内の塩素イオン、ナトリウムイオンを増やし、浸透圧を高めることで便の水分量を増やします。

1日1回、食前に服用する薬で、食後に服用すると効果が強くなりすぎることがあります。

排便を促す効果のほかに、腹痛や腹部不快感を和らげる作用があります。

便秘型過敏性腸症候群の方に適した薬です。

お薬の飲み合わせの心配がないため、他にもいくつかの薬を飲んでいる方でも安心して服用できます。

アミティーザ®(ルビプロストン)

上皮機能変容薬というグループの薬です。

腸管内の塩素イオン、ナトリウムイオンを増やし、浸透圧を高めることで便の水分量を増やします。

1日2回、食後に飲みます。

吐き気がでることがあります。特に若い女性では吐き気をきたしやすいです。

また、妊婦さんには禁忌となっているため、若い女性に使うことはほとんどありません。

便秘と漢方薬

慢性の便秘には昔から漢方薬がよくつかわれています。瀉下作用のある漢方薬の多くには大黄という生薬が含まれています。大黄の主成分はセンノシドでアントラキノン系の刺激性下剤に分類されます。強い効果がありますが、プルゼニド®やアローゼン®と同様に長期連用によって耐性を生じ、大腸粘膜にメラノーシスという変化をおこします。「漢方薬は自然由来だから飲み続けても安心」と思いがちですが、安易に自己判断で漢方薬を選ばずに、まずは消化器内科専門医に相談しましょう。

便秘に用いる主な漢方薬

大建中湯

効果が最もマイルドな漢方薬です。

大黄が含まれていません。

腹痛や下痢を起こすことは滅多にありません。

効果を実感するのには、3日程度かかります。

桂枝加芍薬大黄湯

精神的なストレスによって引き起こされた、腹痛を伴う慢性便秘に用います。

その名のとおり大黄が含まれています。

芍薬や桂皮には鎮痛作用があります。

便秘型過敏性腸症候群にも適した漢方薬です。

麻子仁丸

兎の糞のようなコロコロした硬い便が出る、体力が落ちた高齢者の慢性便秘に適しています。

冷えや肌の乾燥があり、腹部全体が軟弱な方に用います。

大黄が含まれています。

潤腸湯

兎の糞のようなコロコロした硬い便が出る、体力が落ちた高齢者の慢性便秘に適しています。

麻子仁丸で効果が不十分な場合に用います。

大黄が含まれています。

大黄甘草湯

大黄の含有量が最も多い漢方薬です。

甘草を多く含むため、血圧上昇や低カリウム血症に注意が必要です。

やむを得ない場合を除いて、短期間の使用にとどめます。

防風通聖散

大黄、甘草、芒硝を含みます。

肥満体型でお腹の張りが強く、浮腫みやすい便秘患者さんに用います。

ナトリウムが多く含まれるため、高血圧の治療を受けている方には不向きです。

子宮収縮作用により早産流産のリスクがあるため、妊娠中に飲めません。

桃核承気湯

大黄、甘草、芒硝を含みます。

体格がよく、月経痛や肩こりを伴う女性の便秘患者さんによく用います。

高血圧の方には不向きです。

子宮収縮作用により早産流産のリスクがあるため、妊娠中に飲めません。

桂枝加芍薬湯

大黄が含まれていません。

便秘と下痢を繰り返し、お腹が痛くなりやすい方に用います。

混合型過敏性腸症候群の患者さんに適しています。

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