MASLDの日本語病名
NAFLDからMASLD
2023年6月に欧州肝臓学会(EASL)、米国肝臓病学会(AASLD)、ラテンアメリカ肝疾患研究会(ALEH)の3つの国際学会が合同で脂肪性肝疾患の新たな分類病名を発表しました。
そこでの主な変更点は2つです。
一つは"fatty"という表現に差別的なニュアンスが含まれているため、脂肪性肝疾患を"fatty liver disease" から "steatotic liver disease"と変えること。
二つ目は、それまでは脂肪肝疾患を原因によって、アルコール性脂肪肝(Alcholic fatty liver) と非アルコール性脂肪肝疾患(Non-alcholic fatty liver disease | NAFLD)に分類していましたが、アルコール以外の様々な原因による脂肪肝が非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の一つの病名の中にごちゃ混ぜにされてしまっていたのを、原因別にしっかり分けて表現しようというものです。
新たな分類は次の通りです。
- MASLD metabolic associated SLD
- お酒はほとんど飲まないメタボリック症候群が原因の脂肪肝
- 1日の飲酒量はエタノール換算で男性30g以下、女性20g以下
- Met ALD
- お酒をまあまあ飲むけど、メタボもある方の脂肪肝
- 1日の飲酒量はエタノール換算で男性30-60g、女性20-50g
- ALD alcoholic liber disease
- とてもたくさんお酒を飲む方で、アルコールが主な原因となっている肝臓病
- 1日の飲酒量はエタノール換算で男性60g超、女性50g超
- Specific aetiology SLD
- 薬やWilson病などの特別な原因によって起こる脂肪肝
- Cryptogenic SLD
- 原因がわからない脂肪肝
この分類のおかげで、アルコール性と非アルコール性に分類していた時にどちらに分類するべきか悩んでしまっていた「お酒をまあまあ飲むしメタボもある方の脂肪肝」をすっきりさせることができました。
また、メタボとアルコール以外の原因で発症した脂肪肝について独立した Specific aetiology SLD という病名が使えるようになり、これまでメタボの脂肪肝と同じ病名で扱ってしまうことになっていた薬による脂肪肝の方の診断名がしっくりくるものになりました。
この分類を用いると、これまでNAFLDと診断していた方の98%程度がMASLDと診断されるようになりました。
新たな分類の日本語病名
2024年8月22日に日本肝臓学会が、2023年にEASL/AASLD/LAHEが3学会合同で発表した新たな脂肪肝疾患の分類病名に対応した日本語病名を発表しました。
- Steatotic Liver Disease(SLD)
- 脂肪性肝疾患
- Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease(MASLD)
- 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患
- Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis(MASH)
- 代謝機能障害関連脂肪肝炎
- Alcohol Associated (Related) Liver Disease(ALD)
- アルコール関連肝疾患
- MetALD
- 代謝機能障害アルコール関連肝疾患
- Cryptogenic Steatotic Liver Disease
- 成因不明脂肪性肝疾患
- Specific Aetiology Steatotic Liver Disease
- 特定成因脂肪性肝疾患
病名を読んだだけではどんな病気か少しわかりにくいかもしれません。ほんじょう内科では、これまでどおり患者さんに「メタボの脂肪肝」「メタボとアルコールの脂肪肝」「アルコールの脂肪肝」とわかりやすい表現も併せて患者さんに説明していこうと考えています。
札幌市豊平区の胃腸科・消化器内科クリニック
ほんじょう内科
院長 本城信吾