2023年5月の胃カメラ・大腸カメラ~若くても大腸がんになるの?
6月になりました。
先月はじめ、当院の常勤看護師のもとに「消化器内視鏡技師認定証」が届きました。これは、消化器内視鏡領域の知識と技能を習熟した医療スタッフの証です。ほんじょう内科から消化器内視鏡技師認定試験の合格者がでたことは、クリニック全体の誇りです。
また、5月には当院の看護師2名が札幌市内にある基幹病院の内視鏡室に見学研修に行きました。多くの学びと素晴らしい刺激をいただき、研修で学んだことをスタッフ全員で共有させていただきました。
ほんじょう内科はこれからも「スタッフ全員が学び続ける」クリニックでありたいと考えています。
消化器内視鏡
ほんじょう内科の5月の内視鏡実績は、胃カメラが112件、大腸カメラが54件でした。
胃カメラでの主な診断はバレット食道、逆流性食道炎、慢性胃炎、NSAIDs胃潰瘍、スキルス胃がん、十二指腸潰瘍、十二指腸憩室でした。
大腸カメラでの主な診断は、進行大腸がん、大腸ポリープ、直腸カルチノイド、クラミジア直腸炎、大腸憩室、潰瘍性大腸炎でした。
肝臓病
健康診断で肝機能異常を指摘されてほんじょう内科を受診する患者さんの中に、B型慢性肝炎が急に悪化していた方がいました。この方がほんじょう内科を受診したときには、まったく自覚症状がないのにGOT(AST)やGPT(ALT)といった肝臓の数値がとても悪くなっていました。もし健康診断を受けておらず発見が遅くなっていたら大変なことになっていたかもしれないと思いぞっとしました。
B型慢性肝炎では、ウイルスの活動が弱く何年にもわたって落ち着いていた方が急に悪化する場合があります。そして、いったん悪化すると命にかかわる急性肝不全に陥ることもあります。しかし、悪化の兆候を早期にとらえて治療を開始すると肝不全への進行を抑えられます。
無症状でGOT(AST)、GPT(ALT)が低い値が続いている方でも、B型肝炎ウイルスを指摘されている方は、定期検査を受けるようにしましょう。
若くても大腸がんになるの?
ほんじょう内科は開院してから、まだ1年と1か月ですが、この間に40歳未満大腸がんの診断が2例ありました。
アメリカやヨーロッパでは2000年以降20代から30代の若い世代で急激に大腸がんの発生率が増えていることが話題になっています。この原因ははっきりしていませんが、加工肉や糖を含む飲料の摂取の増加や食品添加物の影響が考えられています。また、運動時間の減少や肥満も若年大腸癌のリスクになります。40歳未満の大腸がん患者さんの50%に体重の問題が合併しています。
また、40歳未満で発症する大腸がんの方は、およそ20%に遺伝的な問題があると言われています。
遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)は、Lynch症候群とも呼ばれ、若年大腸癌の原因疾患の一つです。細胞分裂する際には細胞内の遺伝情報物質であるDNAが複製されます。このDNAの複製の際に起こるエラーを適切に修復するのがミスマッチ修復遺伝子です。遺伝性非ポリポーシス大腸癌ではミスマッチ遺伝子に異常があり、DNA複製エラーが修復されずに蓄積するため癌が発生します。
家族性大腸腺腫症は、大腸に100個以上のポリープが発生する遺伝性疾患です。家族性大腸腺腫症では、正常細胞ががん細胞に変わってしまうのを防ぐ遺伝子の一つであるAPC遺伝子に異常があります。このため、40歳までにおよそ50%、60歳までにおよそ90%の方が大腸癌が発生します。