内視鏡AIの必要性
画像認識と人工知能(AI)
画像認識に用いられるAI技術
近年急速に私たちが耳にするようになったAIはディープラーニングという技術によって急速に発展しています。
その中でも画像を認識して判断するAIには畳み込みニューラルネットワーク(CNN)という技術が利用されています。
CNNは人の脳神経の構造を模したディープニューラルネットワークの一つです。
CNNと私たちの生活
顔認証
CNNが利用されている最も身近なものは顔認証です。顔認証の技術はスマホのロック解除、マイナ保険証などすでに幅広く使用されています。
自動運転
また、自動運転技術にもCNNが使用されています。自動運転を実現するためには道路、信号、車両、人などの複数の画像情報を高速かつ正確に処理することが求められます。
診断支援
医療の分野では多くのAI画像診断技術の研究が進められてきており、その可能性は無限です。すでにレントゲン、CT、MRIで臨床応用が始まっています。内視鏡AIもまたCNN技術を応用した画像診断技術で、リアルタイムで医師の診断を支援することで微細な病変の見落としを防ぎます。
内視鏡AIとは
内視鏡AIの特徴
内視鏡AIは検査中リアルタイムに食道がんや胃がん、大腸ポリープの発見と診断を行う支援システムです。
病変を発見すると、画面の表示と音で内視鏡医に知らせます。
「AIで重大な危機を回避する」という意味では、自動車の衝突被害軽減ブレーキと似ています。
内視鏡AIを使用することによる患者さんの身体的な負担はありません。以前と同じように検査を受けていただけます。
当院の内視鏡AIシステム
2024年4月に富士フィルム社の内視鏡AIシステム「CADEYE」を導入しました。
早期胃がん、早期食道扁平上皮がん、早期大腸癌、大腸ポリープの特徴をあらかじめ学習したAIが、内視鏡医をサポートするシステムです。
内視鏡AIは検査中リアルタイムで画像を解析しがんを疑う病変を認識すると音と画面表示によって医師に知らせます。
機能拡張ユニット
EX-1
検出用上部内視鏡画像診断支援プログラム
EW10-EG01
検出・鑑別用下部内視鏡画像診断支援プログラム
EW10-EC02
AI胃カメラ
早期胃がん検出
早期胃がんの発見には、内視鏡医の知識、経験と集中力が必要です。
胃カメラAIは人間の目では見落としやすい粘膜の微妙な変化を検出し早期胃がんの診断を援助します。
早期食道がん検出
胃カメラAIでは早期食道扁平上皮がんも検出する機能があります。
胃がんと食道がんは発症早期に診断することができれば、身体の負担が少ない内視鏡手術で根治できる病気です。
AI大腸カメラ
AIによる病変検出
大腸カメラAIはポリープの発見をサポートします。
大腸がんの多くがポリープから発生するため、ポリープを発見し治療することが大腸がんの発生予防につながるからです。
AIによる鑑別診断
大腸ポリープには癌化の可能性がある腫瘍性ポリープとそうではない非腫瘍性ポリープがあります。
これらのポリープを正確に見分け、腫瘍性ポリープだけを切除することで無駄のない大腸がん予防が実現できます。
大腸カメラAIは腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープの鑑別診断をリアルタイムでサポートします。
内視鏡AIは必要?
現在の内視鏡AIは内視鏡医の眼を完全に凌駕するものではありません。
一部の消化器内視鏡専門医からは「研修医には役立つだろうけど、熟練医師には不要」との意見も聞かれます。
しかし、生身の医師には体調不良や疲れ、心理ストレスから集中力を落とすことがあります。その結果として、診断ミスが起きる恐れはエキスパート医にもあるでしょう。
一方でAIには体調不良や疲労がなく、常に一定のパフォーマンスを発揮します。
万が一の診断ミスや見落としを防いでくれるとしたら、そして早期がんを発見して誰かの命が救われるとしたら、内視鏡AIは私たちほんじょう内科の内視鏡検査に大きな価値を与えてくれることでしょう。
2024年5月6日
消化器内視鏡専門医
ほんじょう内科院長 本城信吾