大腸がん
日本人の「大腸がん」
国立研究開発法人国立がん研究センターの統計によると、私たち日本人が一生のうちに「がん」と診断される確率は、男性65.5%、女性50.2%です。(2017年の統計データより)
そして、日本人の罹る「がん」のなかで最も多いのが大腸がんです。
私たち日本人の大腸がんはこの半世紀の間ずっと増え続けています。20年前と比べると、大腸がんに罹る人の数は1.5倍に増え、大腸がんで亡くなる人の数も1.5倍に増えており、今後も増加し続けると考えられています。
これには、食生活の欧米化によって肉や乳製品に含まれる動物性脂肪を摂る量が増えて、野菜の食物繊維を摂る量が少なくなったことが原因の一つだと考えられています。
大腸がんの5年生存率(病気が診断された5年後の生存割合)は、見つかった時に病気が広がっておらず大腸の壁に限局しているステージ1だと90%以上です。大腸のまわりのリンパ節まで病気が広がっているステージ3だと5年生存率は60~77%、さらに遠隔転移があるステージ4では18.8%と生存割合が急激に悪くなります。このため、大腸がんは早期に診断して早期に治療を行うことが病気を克服するためのポイントとなります。
大腸癌の症状
大腸がんと診断される方のうち、40%の方は無症状です。この方たちは健康診断や人間ドックの便潜血検査で異常を指摘されたのをきっかけに大腸カメラ検査を受けてがんが発見されます。
早期大腸がんは、ほとんどが無症状です。
次に示す症状がある場合は、すでに病気が進行していることが多いです。
これらの症状は大腸がん以外の病気にも起こる症状なので、「便に血が混じっているけど痔かな?」「便秘だけど、野菜不足かな?」と考えがちです。40歳以上でこれらの症状が一つでも当てはまる方は大腸カメラ検査を受けることをおすすめします。
大腸がんの検査
大腸カメラ検査
内視鏡で大腸を観察する検査です。早期がんも診断することができる精度の高い検査です。大腸カメラ検査では大腸がんを探すだけでなく、ポリープを見つけて切除することができます。大腸がんの多くは大腸ポリープをもとに発生するため、がんになる前の大腸ポリープを内視鏡で切除すると、その後に大腸癌に罹る割合が60-70%低下すると言われています。
大腸カメラの際にポリープを切除すると、まれに切り口から出血して半日から数日後に血便がでることがあります。
当院では術後出血の可能性が少ないコールドポリペクトミーという方法で、小さいポリープの日帰り内視鏡手術を行っています。
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造影CT検査
リンパ節や肝臓への転移を診断することができます。また、がんが大腸の壁の外側まで広がり周りの臓器を侵しているかどうかがわかります。過去に造影剤で思い副作用が出た方や、腎臓の働きが悪い方は造影CT検査を受けられないことがあります。
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エコー検査
肝臓への転移や、リンパ節への転移、腹水について診断します。
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MRI検査
直腸にがんがある場合にはMRI検査を用いて直腸の周りの臓器へのがんの広がりを診断します。また、肝臓の転移を診断するために行うことや骨へ転移の診断するためにMRI検査を行うこともあります。ペースメーカーを入れている方はMRI検査を受けられません。
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PET-CT検査
PET-CT検査は遠隔転移の診断や、手術後の再発の診断に優れています。糖尿病をお持ちの方で、血糖値が高い方はPET-CT検査を受けられないことがあります。PET検診では90%以上の大腸癌が見つかるといわれています。ただし保険診療でないため、およそ10万円の費用がかかります。PET検査は限られた一部の医療機関でのみ行っています。
大腸癌の治療
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内視鏡治療
ステージ0から1の早期大腸癌の多くは大腸カメラを用いた内視鏡手術で治療することができます。内視鏡手術で切除した組織は、顕微鏡検査に提出します。顕微鏡検査では癌が血管やリンパ管に入り込んでいたり、癌が粘膜より根深く広がっていたりしていないかを調べます。顕微鏡検査の結果によっては、後日外科手術治療を行うことがあります。
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外科手術
ステージ1から2ではがんの根治を目指した外科手術の適応です。腹腔鏡を用いた手術が行われることもあります。 ステージ3では外科手術の後に抗がん剤治療を行うのが標準的です。患者さんが高齢の場合や、腎臓や肝臓に障害がある場合は抗がん剤治療を行わないことがあります。
ステージ4は病気が広範囲に広がり手術では取り切れないため、抗がん剤治療が主な治療になります。癌のせいで便が通らない場合や、癌からの出血が続く場合には症状を緩和する目的の手術(姑息手術)が行われます。
治療後の定期検査
治療が成功しても、治療後に再発することがあります。ステージ1で約5%、ステージ2で約15%、ステージ3だと約30%の患者さんに再発が起こります。再発部位では肝臓、肺、腹膜、大腸局所の再発が多いです。
大腸癌の再発は治療後5年以内に起きるのがほとんどで、特に治療後3年間は要注意です。
治療が終わった後は、3か月ごとの腫瘍マーカー検査、6か月ごとの胸腹部CT検査、1年ごとの大腸カメラ検査を受けましょう。(主治医が患者さんごとに判断し、検査の種類や間隔を変更することがあります。)
大腸がんの5年生存率
「大腸癌研究会・全国登録2000~2004年」による5年生存率はつぎのとおりです。なお、治療法の進歩や新しい抗がん剤によって治療成績が向上しているため、現在治療を受けている方には必ずしも当てはまらない可能性があります。
ステージ |
5年生存率 |
0 |
94.0% |
Ⅰ |
91.6% |
Ⅱ |
84.8% |
Ⅲa |
77.7% |
Ⅲb |
60.0% |
Ⅳ |
18.8% |
消化器病専門医・消化器内視鏡専門医
肝臓専門医・総合内科専門医
本城信吾 院長
南北線南平岸駅から徒歩6分、リードタウン平岸ベースにある消化器内科
ほんじょう内科
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